6. 市中感染症②
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1. 風邪症候群とその周辺(インフルエンザ, 急性咽頭炎, 急性中耳炎, 急性副鼻腔炎)。風邪を制するもの, 感染症を制す
これも「定義」は難しい
喉頭にある気道と食道を隔てる弁
気道が詰まって息ができなくなり、死に至ることも多い恐ろしい感染症 言い換えるならば、10%は細菌が原因である可能性がある 臨床的にはシンプルに「前者には抗菌薬は効かず、後者には抗菌薬が効く」という理解で不便はない 風邪に抗菌薬が処方されることは多く、専門家の間でも両論がある
「出すべきではない」論の根拠
風邪の原因の9割はウイルスだから
「出すべき」論の根拠
一部の風邪は細菌が原因のこともある
僕はどちらも論拠としては間違っていると考える
目の前の風の原因が細菌か、ウイルスかは「どうでもよい」
「風邪」はあくまで現象=「コト」であり「モノ」ではない
「モノ」的な命題が治療と直結するのは未だに19世紀20世紀的感染症の捉え方、「コト」と「モノ」の混同が起きている
事実、臨床試験では(原因微生物に関係なく)「風邪」という現象に対して抗菌薬を処方してもしなくても、患者の治り方には大差はない
「風邪」という現象に対して、抗菌薬は患者に利益をもたらすか否か、それだけが大事
そして風邪患者に抗菌薬を処方しても、それが患者に利益をもたらすより不利益をもたらす可能性が高い
よって、原因微生物が何であろうと風邪には抗菌薬を使うべきではないのである
抗菌薬は細菌を殺す
しかし、細菌感染症であれば抗菌薬を出さねばならないというのは思い込みに過ぎない
米国では、皮膚の感染症の原因としてMRSAが急増している 小規模の皮膚感染症は、自分の免疫力や外科処置だけで治せるのである 規模の大きな皮膚感染症にのみ、全身抗菌薬を必要とする((2))
ここでも大事なのはMRSAという細菌「そのもの」ではなく、患者に何が起きているか?という現象=「コト」の理解
そこで重要なのは、風邪という現象を正確に言い当てること
一見風邪に見えて、実は風邪ではないということも多い
風邪と違って咳や鼻水は出ないことが多く、ひたすらのどに限定された感染症
つまり、「風邪」のように「どっちでもよい」という態度はとらない
急性咽頭炎では現象だけではなく、「モノ」も大事
ウイルス性はいろいろ
セファロスポリンもA群溶連菌を殺せるのだが、あえて「より狭い」ペニシリンを使い、耐性菌を増やさないように勧告した
A群溶連菌は100%ペニシリンに感受性がある菌((3))
「のど」や鼻からつながっているものには「中耳」と「副鼻腔」がある 外側は鼓膜の向こうに外耳道(耳の穴)があり、内側には耳管という管と繋がっており、これは「のど」に開いている のどには菌のコロナイゼーションが起きており、ウイルスもくっつきやすい
よって、耳管を通って中耳にも菌やウイルスが入りやすく、ここで炎症を起こすと急性中耳炎 子どもが耳が痛いというときは、この病気のことが多い
急性中耳炎の考え方も「モノ」ではなく「コト」
原因は細菌性、ウイルス性があるが、いずれにしても、軽症例なら対症療法(痛み止め等)だけで自然に治る 症状が続く、熱が高い等の重症例ではリスクが高いので、抗菌薬を使用する
頭蓋骨には「部屋」たる空洞がいくつかあり、鼻からこの空洞につながっている
この空洞は鼻の周りにある空洞=腔なので、副鼻腔と呼ぶ
鼻から入った細菌やウイルスがここで炎症を起こすと、急性副鼻腔炎 頭の前の方が痛くなるのが特徴
感がケア他は急性中耳炎と同じ
軽症であれば抗菌薬なしの対症療法
ここでも「モノ」「コト」は1対1関係にない
インフルエンザウイルス以外のウイルスでも高熱を出すことも多いし、インフルエンザも夏に流行したり、微熱しか出ないことも多い
インフルエンザ・ウイルスに特化した抗ウイルス薬はいくつもある ほかのウイルスには効かないため、高熱、のどが痛い病気全部に効くわけではない
「モノ」と「コト」が交錯するインフルエンザとその周辺でこの薬をどのように使うべきか、非常に難しい問題であるが、議論が煩瑣になるのでここでは省略
「インフルエンザ・ウイルス検査陽性」→タミフル処方という1対1対応ではダメ
興味のある人は((4))
2. 肺炎と気管支炎は似て非なる病気
血液に酸素を提供する肺胞(気管支の先にある袋)にまで炎症が及ぶ 気管支と肺炎の区別は臨床的には非常に重要
前者は抗菌薬を使わないで直す病気、後者は抗菌薬を使って直す病気 9割程度がウイルスが原因、残りが細菌
大事なのはその現象が「気管支炎」であり、「肺炎」ではないという1点にある
臨床試験では、急性気管支炎に抗菌薬を出した群と出さなかった群では治り方には差がなかった
たとえ細菌性気管支炎でも、たいていは抗菌薬なしで治せるのが気管支炎
しかし、酸素交換の場である肺胞が侵されている肺炎ではそうはいかない
肺炎は、多くが細菌性だと考えられる
そして、抗菌薬での治療が必要
3つはグラム染色で見える菌
残りの3つは見えない(見えにくい)特殊な細菌
髄膜炎の原因としても有名で、重症感染症を起こしやすい もともと肺炎球菌感染症はペニシリンで治療していた
肺炎球菌もペニシリン耐性菌が増加したため「もうペニシリンは使えない」という雰囲気が高まった しかし、経験的に、たとえペニシリン耐性であっても肺炎球菌による肺炎はペニシリンで治ってしまうという観察を臨床医たちはしていた 耐性検査は検査室で行うが、どうも「患者の体内で起きていることと、検査室で起きていることは同じではない」ようなのだ
ほとんどの肺炎球菌による肺炎は、ペニシリンで治療可能
特に学童に肺炎を起こすことが多い
前述の肺炎球菌もペニシリンは使えるのだが、マクロライドは大多数耐性化している
日本ではマクロライドが過剰に使用されていると考える
マイコプラズマは特殊な細菌で、ペニシリンのようなベータラクタムと呼ばれる抗菌薬は一切効かない よって治療の選択肢は限定される
両者ともに小児に対する特有の副作用(前者:歯の黄染、後者:軟骨形成阻害)が懸念され、好んで用いる薬ではない
マイコプラズマ同様、ベータラクタムが効かない細菌で、特に高齢者の重症肺炎の原因として重要
肺炎の原因としてはそれほど多くはないが、それほど珍しくもない
こういう失敗例からも感染臓器、原因微生物を見つけることの重要さが理解できる
3. 尿路感染症(膀胱炎, 腎盂腎炎)は若い女性に多い病気だ
例えば尿道にも感染症は起きるが、その多くは性感染症にカテゴライズされる 男性、特に若い男性が尿路感染を起こしたときは、何か理由があるのではと考える
膀胱尿管逆流等の解剖学的異常がないか、検索が必要なこともある 「現象」に立脚した臨床的現場的に見ると「熱があるかないか」の違い
膀胱炎
熱が出ないのが基本
診療体制的には外来
腎盂腎炎
熱が出るのが基本
診療体制的には入院
治療期間も異なる
膀胱炎の治療期間は基本的に3日間
ST合剤は「副作用の強い薬」というイメージがあるが、副作用の発生率はフルオロキノロンと変わりない
フルオロキノロンも「安全な薬」という「イメージ」があるが、不整脈等命に関わる副作用も起きる そのため、フルオロキノロンの代わりにどのような抗菌薬を用いるべきか、という代替案を示した論文も発表され、やはり尿路感染にはST合剤が推奨されていた((5))
腎盂腎炎は血流感染も合併しやすく、治療期間は長くなる 僕はセファロスポリンを14日程度使うことが多いが、治療方法には色々なバリエーションがある 何度も膀胱炎になる女性は珍しくない
クランベリーの代謝産物が大腸菌の定着を防ぐためだが、この方法、長い間「効く」「効かない」で揉めてきた 放送大学のテキストでも、本書の前版(2012)では「クランベリージュースは効く」と書いていた
ところが、現在(2016年時点)では「クランベリージュースを尿路感染予防目的で使うべきではない」という意見のほうがコンセンサスを得ている((6))
医学のみならず、科学においては「一貫した正しさ」は必要ない
新しい研究が発表され、従来の「常識」が覆ることはしばしば
だから、医学を学ぶときは、常に最新の知見を得ることが大切
昔の知識を暗記し、その知識にあぐらあをかき、無勉強なままで自分の経験を頼りにしてるような態度では、この世界(医学)では通用しない
4. 急性下痢症はバカにできない
途上国では安全な水を確保できない事が多く、脱水が死亡原因となる 人間の体は大部分が水からできている
下痢の原因は感染症とは限らない
しかし、短期間の「急性下痢症」であれば、やはり感染症の可能性が高い 急性下痢症は、我々専門家が見る「マニアックな」感染症を除けば、次の3つに大別される
原因は細菌そのものではないので、抗菌薬は必要なく、ひたすら輸液による脱水の予防が治療の中心となる 症状はきついが、24〜48時間程度で自然に治るものっが多い
近年深刻な問題となっている
特記すべきはその感染力と発症力で、まな板、床、テーブル等、環境中に長く持続し、感染が拡がりやすい
世界の腸炎最大の原因でもあり、日本で報告される食中毒の7割程度はノロウイルスが原因である 石鹸等通常用いる消毒薬では死滅せず、環境は希釈した次亜塩素酸(ハイター等)を用いて処理する必要がある また、血液型O型だと発症しやすく、B型はかかりにくい これは血液型抗原によりウイルスの吸着のされやすさに差があるため 血液型が人間の特徴(性格含め)に寄与することはほとんどないが、これは稀有な例外
ノロウイルスは人に何度でも感染し、ワクチンも治療薬も存在しない、対応が非常に難しいウイルス 小児に多い腸炎の原因ウイルスで、ノロウイルスよりも重症化しやすい
ただし、ノロと違って免疫ができるので、ロタウイルス感染は大人はかかりにくい感染症
日本では5歳までにほとんどの小児が感染、罹患する「みんながなる病気」であるが、経口ワクチンで予防可能
WHOはワクチン接種により、50万人以上の小児の命を救うことができると見積もっており、すべての国(日本含む)でこのワクチンが定期接種プログラムに組込まれるよう推奨している 日本でも本ワクチンは使用可能だが、残念ながら定期接種に採用されていないので無料で提供されず、高額なのが問題
多くは食物や水を介して感染する
実はこれらの感染症でも、大奥は抗菌薬治療は不要で自然治癒することが多い
高熱がある等重症化した時、免疫抑制患者等に限定して抗菌薬を使用する
ここでも「モノ」より「コト」が大事
2011年に「ユッケ」を食べて死亡した事例が報告され、その後(なぜか)牛レバ刺の提供が禁止されたが、この時の感染症もEHECによるものであった(このときはO111) EHECに対する抗菌薬使用は議論の余地があり、決着がついていない 抗菌薬による菌の破壊、毒素の放出で、かえって予後が悪くなるという懸念がある
日本ではホスホマイシンを使用することも多いが、その有効性、安全性については十分なデータがない 5. 下痢がない腹痛を急性腸炎と言うなかれ。難しいぞ
しかし、「下痢がない」腹痛を「急性胃腸炎」等という適当な診断名をつけてしまうと、痛い目に遭うことが多い 「下痢のない」腹痛の原因は多種多様
腹部臓器はクダか、ぎっしり詰まっているかの違いで2つに分けられる 下痢を伴うことが多く、また痛みが間欠的(波のように寄せては返す)なことが特徴的
厳密には膵臓や十二指腸は腹腔「外」に位置するが、ここも便宜的に無視する
ざっくり分けると腹痛の原因は右側に多い
左側
腹痛を起こす臓器はほとんどない
右側
上
下
「お腹の中」に腹痛の原因がないこともある
産婦人科関連の疾患も腹痛を起こしやすい
下痢を伴わない腹痛の原因は以上のように多種多様
「腸炎」とその周辺ばかりに注目していると誤診の原因となる
特に女性患者では鑑別診断は多くなり、臨床家を悩ませることは多い
6. 髄膜炎, 脳炎。日本は先進国なのに、途上国
日本でも近年、小児を対象とした肺炎球菌、インフルエンザ菌の予防接種が承認され、定期接種に組込まれたおかげで、小児でのこの病気は激減している 肺炎球菌による肺炎は、ほとんどペニシリンで治療可能だと述べた しかし、髄膜炎だとそうとは限らない
ペニシリンは髄液に移行しにくく、十分な治療濃度を達成しにくい ここでも「感染臓器はどこか」は重要な問い
インフルエンザ菌もセファロスポリンで治療できることが多い
髄膜炎が「膜」の炎症なのに対して、脳炎は「脳そのもの」の炎症 もっとも、髄膜炎の炎症も脳実質に波及し、そのため髄膜炎患者もしばしば意識障害やけいれんを起こす 両者は「程度」の問題
細菌性脳炎というのは稀で、感染症による脳炎はウイルス性が多い したがって、抗菌薬は効かない
日本におけるウイルス性脳炎は夏に多く、その多くは原因不明のままに終わることが多い ブタにいるウイルスで、蚊を介して感染するが、予防接種により予防可能 しかし、このワクチンの接種率は十分とは言えず、現在でも患者が見つかっている
7. 皮膚, 筋肉, 骨, 関節等の感染症。大事なのは, トポロジー
「腕, 脚が腫れている」という感染症を内科医は苦手とする事が多く、この領域は整形外科医の方が得意なようだ
問題は解剖学とトポロジー的感性にある
多くの内科医にとって、「腕」はシンプルに「腕」
腕を切り開いて手術する整形外科医にとって、「腕」は単一なる「腕」ではない
優れた整形外科医はそれらの違いを細かく弁別し、それが皮膚の炎症なのか、皮下組織の炎症7日、腱の付着部の炎症なのかを区別する
内科医でも例外的に、リウマチ科の医師はこういう診断は上手
A群溶連菌が筋肉を覆う筋膜に炎症を起こす病気
数時間単位で進行し、筋膜をどんどん「溶かして」全身状態は悪くなって患者は死に至る
ここでも感染臓器によって、同じ微生物でも異なる振る舞いをする
感染症の教科書にはよく、壊死性筋膜炎患者の写真が載っている
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間違いではないが誤解のもと
確かに壊死性筋膜炎を見逃して放っておくと、いずれ患者は教科書の写真のようになる
しかし、発症初期の壊死性筋膜炎は皮膚は正常で黒くも赤くもない
「筋膜」の病気であり、トポロジー的に皮膚は無関係
しかし、患者は非常に苦しそうにしており、血圧等バイタルサインは異常で、皮膚には病変がないのにもかかわらず、そこを触るとすごく痛がる これが壊死性筋膜炎
ここでも「皮膚」と「筋膜」を正確に区別し、壊死性筋膜炎という「現象」を正確に掴み取らないと、診断はうまくいかない
壊死性筋膜炎の治療は抗菌薬の大量投与と外科的な壊死組織の除去(デブリドマン)であり、数時間の診断の遅れは文字通り命となり、「教科書のような」壊死性筋膜炎を作ってしまう 8. 性感染症は大事。セックスを甘く見てはいけない
「現象」に立脚して分類すれば3つに分けられる
「分かりやすい」し、性病科等慣れた医者のところを受診しやすいので、見逃し、治療失敗の可能性は低い
なお、タイムラグは生じるが、子宮頸がんもパピローマウイルス(ただし、尖圭コンジローマを作るのとは別のタイプ)による「感染症」であり、ワクチンでの予防が期待されている 生殖器以外に病気を起こす感染症
見逃されやすい
特にB型肝炎はセックスで感染するという概念は、日本では長い間なかった 両方に病気を起こす感染症
梅毒は「何でもあり」の感染症で、性器に「痛くない」潰瘍を作ったり、全身に皮疹を起こしたり、肝炎を起こしたり、脳を破壊したりと、とにかく、ありとあらゆる臓器に病気を起こす 本稿執筆時点(2016)で、日本では梅毒発生数が増加している
性感染症の大多数は性教育、コンドームの使用、セックスのパートナーを限定することで予防が可能 一つの性感染症を見つけたら、他の性感染症も併存していないか探す(しばしば併存している)、パートナーも治療する等の配慮も重要
パートナーを治療しなければ、また同じ感染症が起きてしまう
9. 敗血症と感染性心膜炎は違う病気
定義は学会等によっても異なり、またしばしば新たに定義し直されている
つまり、肺炎でも尿路感染でも髄膜炎でも、「敗血症」を合併することはしばしばある
ショックを伴う敗血症で、これは予後が悪い(死亡率が高い)
血圧が下がりすぎると血液が各臓器に循環せず、その血液が運ぶ酸素を各臓器に提供できず、いずれは死に至る
ショックの原因には心臓の病気によるもの、出血によるもの等いろいろあるが、敗血症も重要なショックの原因 敗血症の時には血液に細菌が入り込んでいることが多い
敗血症と菌血症は名前が似ており、またしばしば併存しているが、同義ではない
菌血症を伴わない敗血症もあれば、敗血症を伴わない菌血症もある
若干語弊はあるが、そう言い切っておいたほうが本質には迫りやすい
全体像そのものからものを判断することであり、「部分の積み重ね」から全体像を作り出さないことを言う
心理学用語からの転用
要するにショートカット
「高齢者」「肺炎」「温泉」→レジオネラ肺炎のように、キーワードのような少ない情報から連想し、診断仮説を立てる しかし、これもショートカットではあるが、「部分の積み重ね」による「全体像の希釈」には違いない
ゲシュタルトは全体を全体として扱うのであり、部分は全体という文脈の中での部分でしかない
卑近な例: AKB48という人気グループがいる(2016年時点)
AKBファンであれば、メンバーが視界に入れば即座に「それ」と分かることだろう
AKB48ファンは各メンバーの身体全体を全体として、瞬時に正確に「それ」と認識する
そこにはショートカットも、部分の積み重ねもない
僕も敗血症患者を見れば、(たいてい)瞬時に「それ」と分かる
心内膜炎患者は瞬時とはいかないが、少なくとも敗血症患者との区別は瞬時にできる
それは、有り体に言えば、敗血症は救急車で担ぎ込まれてくる患者であり、心内膜炎は「つらい」とこぼしながら歩いて外来に来る患者
敗血症は即座に診断し、治療しなければならない
心内膜炎はじっくり吟味し、検査し、診断し、それから治療すれば良い(ことが多い)
両者が全然違う「現象」であることだけ、ここでは理解して欲しい
10. 不明熱を起こす感染症は難しい。感染症とは限らない
その定義は複数あり、時代によっても変化している
要するに「医者が頑張っても診断できなかった熱」のこと
この「要するに」が重要で、教科書の定義なんて覚える必要はない
例えば、不明熱をなす体温の定義は接し38.3℃となっているが、華氏にすると101°F、アメリカで「俗に」発熱した体温を指している
つまり、そこには何の科学的な厳密さも必然性もない
発熱患者で原因がわからなければ「不明熱」
不明熱の原因は4種類に大別される
その原因は構造的で以下のようなものがある
ゲシュタルトの設定ミス
「いわゆる」敗血症のようなイメージを心内膜炎に持っていると、「わりと元気な患者」に血液培養を行わない
自分の専門臓器にしか注目しない場合
心内膜炎は少なくとも初期には「心臓の症状」が皆無
したがって、心内膜炎の患者は循環器科を初診で受診しない
その他の医師は心臓を専門にしておらず、臓器に特化した診療をしていると「構造的に」見通され続ける
しかし、CT、MRI、PET等、画像診断技術が発達した現在において、肝細胞がんや腎細胞がんが「医者に診断できない熱」の原因であることはまずない よって、不明熱における悪性疾患の検索とは「リンパ腫探し」がメインとなる(ことが多い) これらは優れたマーカーが血液検査で存在しており、やはり普通の医者が見逃すことはまずない 逆に言えば、こういった疾患をターゲットにして検索すれば、診断はそんなに難しくない
不明熱の定義において「医者が診断できなかった」の「医者」のレベルは問われていないのであり、各医師によって不明熱の「不明の度合い」は異なる
その他